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こちらでは最近私がもった感想を書かせていただきます。どうぞご参考になさってください。
我が国の法人税の実効税率を引下げることが最近議論されています。グローバルな視点からすると、10年から20年遅れた議論です。しかし、遅れていても、避けて通れない道であることは確かです。でも、税率引き下げのことばかり議論の対象となっています。これは議論の本質がピンボケになっていると考えます。
では何が問題なのでしょうか。次の算式をご覧ください。
利益 X 税率 = 法人税
これは法人税額の計算式です。あたりまえといえば、あたりまえのことです。この算式の中で、今回「税率」を引下げようと議論されています。そうすると、法人税額が少なくなってしまいます。それはいけません。日本国には1000兆円の借金がありますので、増税をして、これを返済しなければならないからです。財政の立て直しの必要性です。また、法人税額が減ってしまうのでは、消費税率を5%から8%に増やした意味がなってしまいます。
となると、この算式の右辺の金額(つまり、法人税額)は、一定、ないし増額される必要があります。となると、左辺の税率が引き下げらるのですから、「利益」がその分増えなければならないことになります。これが問題なのです。どうやって企業の利益を増やぜばよいのか、という問題です。
上の算式では「利益」と書きましたが、正確には「課税所得」です。企業の利益と課税所得は同じではないのか?違います。利益は一般的にいえば企業の「もうけ」です。一方、課税所得は法人税法で決められたもので、必ずしも「もうけ」と一致するものではありません。法人税法では、課税所得は益金から損金を控除した金額となっています。益金、つまり課税対象になる収入も、損金、益金から控除できる経費も税法に規定されています。つまり、税法で損金とされない経費は、課税所得の計算上控除できません。たとえば、罰金は、企業の利益を計算上は経費として取り扱われますので、利益を減らしますが、税法上は損金として認められていませんので、つまり課税所得計算上は損金となりませんので(経費として差引けないので)、課税所得を減らす効果はありません。といった具合に、利益と課税所得計算は多くの点で異なる費用項目があります。
ここまで話しますと、上で企業の利益を増やすと書いた意味は、課税所得の計算上認められる損金の範囲を絞る、という意味であることがお分かり頂けると思います。税法上損金の金額を少なくするわけですから、よく言われるように法人税率実効税率の引き下げにより企業の利益が増えることにより、逆に課税所得そのものも増えるという議論は異質のものです。
損金は税法で決めることですから、いくらでも少なくすることが可能です。理論上はゼロもありえることになります。損金がゼロということは、課税所得イコール益金(つまり、課税対象となる収入金額)となりますので、法人税率はかなり低くくなることもあり得ます。たとえば、10%とか8%になれば、消費税とほとんど同じになってしまいますね。逆にいえば、法人税率90%でも構わないのです。この場合には、課税所得がほとんどゼロになるように、損金の範囲が設定される訳です。
損金は税法で決めることですので、損金を認める認めないということを(また、ここでは議論していませんが、課税対象となる収入を減らす増やすということも)、「課税ベース」の縮小あるいは拡大と呼びます。課税ベールを拡大するとが、上の算式でいう「課税所得」「企業の利益」の増加ということになります。課税ベースをどういう手法で拡大するかということは(つまり、どのような企業や産業に対して、どのような損金を認めるかというこは)、政府の政策の問題です。政府は選挙目当てで、中小企業を手厚く保護する政策をとっています。つまり、中小企業には数々の優遇税制が設けられていることなどが、その一例です。
将来の課税ベースを決定するということは、将来の経済政策決定の一環でなければなりません。いま議論されている、第三の矢である成長戦略に沿ったものでなければなりません、いや、成長戦略そのものでなければならないと考えます。つまり、どのような産業やセクターを成長させていくるのかという問題です。
以上の説明でお分かり頂けたと思いますが、議論の本質は法人税率の引き下げにあるのではなく、課税ベースをどのようにするかにあるのです。
以上私の考えを述べましたが、ご意見を頂ければ幸いです。
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